善光寺表参道沿いに栽松院(さいしょういん)というお寺があります。観音堂から始まった寺で、「しまんりょう」の名で親しまれています。長野市民によく知られた「しまんりょ小路」の「しまんりょ」の名前は、このお寺に由来します。栽松院は今回の絵解き図にも描かれる予定です。
その栽松院の境内にあるのが、嶋の天神です。その天神さんの前には、昭和4年につくられた、こんな石の標柱が立っています。
「善光寺 嶋の天神」
ここは善光寺境内でないにもかかわらず、「善光寺」と書かれています。昔は、善光寺の周囲の町、いわゆる「善光寺町」のことも善光寺と称していたからでしょう。
善光寺参り絵解き図には、善光寺境内だけでなく、周囲の町、寺社、山、川なども描きこまれます。善光寺なのになぜ周囲も含まれるのでしょうか? 現代の感覚では不自然に思われるかもしれません。でも昔の人々は、善光寺の周囲の暮らしや自然の営みも、善光寺の一部として、一体のものととらえていたはずです。この感覚を、絵解き図を通して多くの方に取り戻してほしいと願っています。(小林竜太郎)